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2015-06-21

とうとうNさん 車椅子


人は過去の事を自慢するようになったらお終い。
もちろん過去を振り返る事は大切な事だが
ましてや過去の栄光を
とくに他人にとっては栄光でも何でもない事を
聞かされる事ほど苦痛はない。

同じ透析患者Nさん。
母親と同じに近い年齢で
九十歳に近い。
九十歳という年齢を聞くと
もう体力的にはお終いと思うが
おそらく本人もそういう気持ちになるかもしれない。

だが
この世には元気で働いている人は
数多くいるし
マスコミなどで紹介されるのは
九十歳で食堂を続けているとか
マラソンをしているとかが
テーマとしては取りあげられるが
とくに目立った事をしていなくても
長生きで元気な人もいる事は
考えられる。
ただおそらくどんな長生きも
カラダを動かす事に支えられていると思う。

そのNさん
かつて吉祥寺の某銀行の店長だった。
そして
今の吉祥寺の「繁栄」は俺がやったとばかり自慢するのだ。
なんでも当時デパートの伊勢丹も東急も三越もなく
街を活性化するために誘致したというのだ。

いまの吉祥寺は住みたい街ナンバーワンだそうだが
けっしてそうは思わない。
もちろん人が集まれば
何ごとも質が一定上がるかも知れないが
同時に安物も氾濫してくる。
食についてもモノについても同じだ。
若者は集まるかも知れないが
その雑踏に困惑するばかりだ。

まあそれはいいとして
かつて野球の1番バッターだとか
ゴルフで何点だとかとにかく
話せば自慢話ばかり。
もちろん静かにその話を聞く事は
先輩への敬意で怠らない。

ただ話を聞くと
ほとんど動かない生活をしている。
もちろん週3回の病院への通院はしているが
ほとんどがバスと電車だ。
私が山歩きをしていることを知って
うらやましいというばかりだった。
私の山歩きはまだ四年目くらいだ。
四年まえは
Nさんがまだふつうに歩いていた。
Nさんもまだ透析を初めたばかりと思う。

「うらやましい」はそのまま
生活に現れているのだろう。
せっかく住まいの近くに善福寺公園という
二つの大きな池もあり自然豊かな環境でありながら
ほとんど行かないという。
せいぜい2ヶ月に一度くらいに
大阪の女性に会うくらいのようだった。

ここでもその女性が有数の美人だったことを
写真を見せながら自慢していたが
どうやら昨年くらいから
大阪へも行かないようで
あまりその女性ともうまくいっていない印象だった。

そのころから
どんどん歩幅が狭くなる。
ふつう前足と後ろ足の間に
1足分くらいは空く。
Nさんもそのくらいだったのが
つい最近では前足と後ろ足が
その半分くらい重なる歩き方しかできなくなっていた。
これが能や狂言であれば
りっぱなすり足である。

病院内であろうが街の中であろうが
すり足で歩けばつまずいて
ひっくり返る。
不安定になって昨年くらいから
ストックを使っているが
先週くらいなど
いまでは手すりがないところは
歩けないような姿も見えた。

同時に透析開始に血圧が200以上ある。
そしてわずか2キロくらいの水分を
4時間の透析でカラダから取り出すと
血圧が100以下まで下がるほど
血圧が急変する。

脚の筋肉は筋肉の塊だ。
そのなかには多くの血管もあり
血液量も多い。
脚の筋肉が収縮すれば
血液も押し流される。
それが多いほど
血流量も多くなる。
それゆえに脚は「第二の心臓」といわれ
私が山歩きを「延命装置」といって
励んでいるのはそこにある。

一般にも「老いは脚から来る」というが
老いると脚が衰えるというのでなく
脚が衰えると
カラダ全体が衰えるという事なのだ。

まして大きく心臓に負担がかかる「透析」。
カラダの水分が多ければ
それだけ血圧は高くなる。
わずか2キロくらいの水分を
カラダから取り出すと
心臓にはおおきな負担だ。
だから急激に血圧が降下し
80や50ともなると
生命の危険にさらされる。

血圧200をみるとカラダの水分量が多い
血圧80をみると水分が少ない。
患者はどうしても80をみる。
基礎体重を上げて欲しいと主張する。
そしてなかなか上がらない基礎体重(ドライウエイト)に
錯覚をして
じゃあ増えないようにとして病院へいく。
飲まないよう食べないようにと錯覚。

そりゃそうだ。
体重の増加量が血圧を押し上げていると錯覚すると
食べるものも飲むものも控える。

主治医は心臓になにか異常があるかもしれないといい
検査日を指定した。
たしかに異常があれば
こういうことも説明できる部分もある。
しかし
私は医師でもないから傍目でしかみてないので
たしかなことはいえないが
心臓には異常はない。
むしろ心臓検査などという検査自身が
負担をかけるのではないかと心配する。

Nさんに「いまからでも遅くないから
毎日あるくことからはじめましょう」

きのうの帰り言うつもりだったが
そのタイミングを逃した。






このところ急な仕事でブログを書いている余裕がなく
八月くらいまではこれが続きそう、ふーー。