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2016-11-03

シャント手術最中医師曰く「トラブルがありました」

昨日のシャント手術。

シャント手術は当然透析導入の際に一度やってるので
イメージが分かっているせいか
手術前に緊張することもなく余裕がある。
手術用のあの宇宙船のような形をしたライトの下に
明るくそして
ひんやりした手術台に横たわるときは
少しだけ緊張する。

執刀医と補助の?医師の二人と2人の看護師で
手術が始まる。
さすが手術室でメスを入れられるときは
やや構える。
メスが走る感覚はいやなものだが
局部麻酔なので頭は働いて
メスを入れる部位以外は普通だ。
むしろ麻酔薬を最初に打つ穿刺が痛む。

ポップなCDがうっすら聞こえる。

医師同士がささやきながら会話をしているが
なかなか聞こえない。
しばらくして執刀医が
「トラブルがありました」という。
え!なんか失敗して
動脈を切り損じたとか
何かあったのか?とどきっとする。

すると
事前に説明されていた予定の部位では
シャントが作れないという。
その部位の動脈が石灰化で
医師が言うには
「血管がせんべいみたい」で
シャントを作るために
切ったり縫合しても
むしろ血管が壊れる可能性が高いというのだ。
作ってももろいシャントを作っても
トラブルで手や指が壊死することもあり
腕を切り落とさなければならないことにもなりかねない
というのだ。

ああ
我が輩の血管はもう石灰化でボロボロなのだ
とつくづく思わざるを得ない。
ではシャントも作れなければ
透析もできず先は短い
と一瞬考える。
絶望的。

医師の説明が続く。
予定の部位は石灰化が進んでるけど
少し心臓に近いより太い動脈を使って
シャントを作ろうと思うという。
つまりもう一カ所メスを入れるということだ。

そうか
腕の先に行くほど血管は細くなり
流れが緩慢になり
石灰化しやすいのだ。

もちろん希望があるなら
二カ所目だろうが喜んで承諾するしかない。
手術のリスタートだ。
また麻酔薬の痛い穿刺があって
メスが入れられながら
手術台の宇宙船の光源をにらみながら
「どうしてこんなことになってるのだろう」
と心でつぶやく。

手術台の体は疲れを感じている。
CDから流れる曲がいつのまにか
ベートーベンの「田園」だった。
看護師にボリュームを上げることをお願いした。

我が輩のパソコンには2000を越える曲は
収めてある。
その80%がクラシックで
透析中もまずクラシックを聴いてる。
そのうち20曲くらいを選定し
我が葬儀あるとすればその際はそれを流してほしいと
「終い支度」として文章にしている。

「田園」はその中には入ってはいないけど
手術台で横たわり
流れてくる音符を聞いてると
なにか我が輩の葬儀の状況に近いな〜
と感じることができる。

それを医師につぶやいたら
医師は「不吉な」と笑って応えてくれた。
いやいや手術も終盤だからこういうことが言えると弁解した。

2時間15分手術台に固定されていたものの
なんとか無事に生還。
いまは縫合した糸も抜く必要もないようで
以前のように包帯などでの固定もなく
透明なシール状の保護材を貼られ
出血もなく即退院だった。

13年前のシャント手術の経験からいうと
その夜
しくしくと傷口が痛んで
痛み止め薬をもらった記憶があった。
今回も痛み止めを処方されたが
まったく痛みはなく翌日を迎えられたことは幸いだった。