われわれが透析といってるのは
血液をカラダの外にとりだし
一定の水分と老廃物を
フィルターで濾過しふたたび戻す血液透析(HD)のことだ。
だが血液透析のほかに
腹膜透析(CAPD)というのがある。
といっても
水分と老廃物を濾過することは同じだ。
腹膜透析は基本的にはわれわれのように
1日おきの通院は必要がない。
ただ数年かそれ以上経つと
腹膜透析では老廃物や水の排出の能力が落ちるらしい。
わが病院に最近1週間のうち1日だけ火曜日に
通院するニューフェイス患者Sと
帰り道話す機会があった。
Sさんもだんだん腹膜透析だけでは
濾過しきれなくなり
週1回だけ血液透析をしなくてはならなくなったというのだ。
腹膜透析は話や知識では知っていたが
実際にやってる人は初めてだった。
腎不全になって透析が必要になると医師から
どちらか選択できることを説明される。
どちらも未知の世界だから
説明されてもなかなか理解に苦しむ。
血液透析は基本は1日おきの1週間に4時間が3回。
腹膜透析は1日に20分が4回の作業だけという。
自宅でも職場でも旅先でもできるというメリットがある。
仕事を続けるには
腹膜透析はずっと有利といえる。
なので
よほどわが輩も透析導入当時考えたが
結局血液透析を選択したが
この1日おき4時間週3回の透析は
ある程度は覚悟していたが
大幅に仕事ができなくなったのは確かだ。
いまでこそ週1回の血液透析になったSさんは
わが輩よりずっと若いので
仕事ができる環境を選んでの腹膜透析だったのだろう。
しかし話を聞いてみると
なかなかたいへんなのは同じようだ。
腹膜透析の仕組みは
まるで奇想天外な方法で
簡単にいうとお腹の中に
水より体液より濃い透析液を入れることで
あの学校で習った濃度の薄い液体は
濃度の濃い液体に吸収される
という浸透圧の原理を利用し
同時に老廃物も吸収し
一定時間経ったら透析液を交換するというもの。
血液透析の場合はダイアライザーというフィルターだが
腹膜透析の場合はお腹の中の腹膜がフィルターということになる。
血液透析もすごいと思うが
腹膜透析も人間がよく考えたと思う。
わが輩はお腹に作る
その透析液の出入り口をつけるのが嫌だったのもあって
血液透析を選んだ。
透析液さえあればどこでも仕事が続けられるというのも
魅力はあったが
5,6年で腹膜の能力が機能しなくなるということと
お腹の出入り口の菌からの管理をすることも
心配だった。
実際にSさんもお腹からの菌の侵入で
入院したこともあるそうだ。
何年だったか聞いたけど忘れたけど
腹膜透析の能力も落ちてきたので
週1回の血液透析がはじまったということだった。
腹膜透析の日々はどんなだろうといろいろ聞いたが
仕事場にでかけるとき
2kgの透析液のパックを2個ふつうのバックに入れて出かける。
4kgというとけっこう重い。
スーパーで買う米5kgよりやや軽いっていったところ。
4kgといえばわが輩の体重増加とほぼ同じ。
職場の昼休みにお腹とパイプでつないで透析液を交換する。
20分くらいだそうだ。
夕方ふたたび交換。これで2個のパックを使ったことになる。
夜寝る前と朝起きて交換する。
透析液は2種類の濃度の異なるものを使っていて
濃度が濃いのは透析能力は高いが
腹膜を痛める率は高いということで
それほど頻用できるものではないとのことだが
夜間の場合に使ったりと
使い分けをするのだそうだ。
お腹の出入り口からの雑菌の侵入を防ぐのには
細心の注意を払っているようで
視力が悪いと難しいというようなことも話してくれた。
1日4回分の透析液のパックは800kgとなる。
出張する時はもちろん宅急便で送ることもできるのだろうけど
クルマに積んで行くらしい。
われわれ血液透析の輩は
病院にたどり着いての透析機器が命綱であるが
腹膜透析の輩は持ち運びできる200g透析液のパックが命綱といえば
腹膜透析のほうが楽なような気もするし
毎日の透析なので
ほぼ食事制限がないかゆるやかとのことが羨ましい。
でもどちらにしても難儀なことに変わりはないかな。