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2013-03-06

「転移しないガン細胞」に自分はどう選択する

15年くらい前
身内で乳がんが見つかったとして
手術をすすめられていたが
そのころから
「主治医は自分」と常々思っていたのもあって
いろいろ調べていて
慶応義塾大学医学部の放射線科講師の近藤誠氏の主張に出会った。


氏は30歳頃アメリカ留学し最先端の放射線治療を研究していた。
アメリカでは乳房にガンが発見されたからといって
切除しないで女性としてのシンボルを守る例もあるのを見ながら
帰国して
「乳ガンは切らずに治る」
と主張した。
いまから25年くらい前だ。

「治癒率は同じなのに、勝手に乳房を切り取るのは、
外科医の犯罪行為ではないか」

というのが主旨だ。
ここで「治癒率が同じなのに」というところが
なかなか論争の中心となったのだが。
近藤氏に言わせれば
切除しなければならない状態になって発症しているガンは
切除してもすでに転移している場合
あるいは
手術で当然行われる臓器の切り取りなどは
ガン細胞の増殖の可能性を増す。
さらに
手術を含めた入院は体力を削ぎ落とす。

「検診で見つかったようながんで死ぬことはほとんどない」
「ゼロとはいいませんが」

といいきる。
150人以上のがん患者を治療しないで様子を見てきて
症状が出てきてなく検査だけで発見した場合
転移は出てこないという。
乳ガン温存療法では名が知れている。
20年以上変化もない「がん」もあるのだそうだ。

つまり
小さいままのがんはがんとはいえないというのだ。
そのまま増殖も悪さもしないというのだ。
むしろ
手術や抗がん剤の副作用こそがカラダもこころも侵すという。


一般的にがんを検査で発見できるのは1センチメートル前後。
ひとつのガン細胞は1ミリの100分の1の大きさだから
1センチになるのに5〜10年かかる。
本物のがんが発見された時には
すでに転移している可能性が高い。
その場合
なるべく軽い治療を
あるいはなるべく臓器を残してするべきだという。

こういう主張を言い続けて30年近くなると思うが
本屋の書棚を見れば何冊も出ていても
医学界の異端児というレッテルを張られ
講師から教授への道も閉ざされてきたのが
菊池寛賞を受賞したからだろうけど
ワイドショー(テレビ朝日)ではあるが
取りあげられていたのが印象的だ。

必ずしも近藤氏がすべて正しくなったとも思わないが
15年まえ
わが輩の「切らないほうが」の助言も一笑に付された。
それはそれで本人の選択だから異議を唱えないが
「主治医は私自身」
さまざまな「道」を得た上で選択していきたいものと改めて感じた。




*写真はテレビ朝日より